秘密の糸Season1㊤
「誰だろ?こんな時間に」

画面には知らない番号が映し出されていた。

あたしは電話に出た。

『…もしもし?』

『あ、出てくれた』

「雅昭さん!?」

「久しぶりだね、舞由香』

初めて聞く雅昭さんの声…。

電話だと少し低いんだ…。

『雅昭さん…』

その声を聞くだけで、あのときに戻った気分だった。

『ふふ、どうしたんですか?』

『教えてくれたから早速掛けてみた』

(嬉しい…)

側にいてくれたみたいだった。

『元気にしてる?』

『はい…。雅昭さんは?今日も仕事ですか?』

『そう、今日は残業、目痛いよー』

『大変ですね、ちゃんと休んで下さいね?』

『ありがとう…』

声を聞いただけなのに、胸がギュッと締め付けられ

涙が出そうになる。

『…会…いたいです…雅昭さん』

声を聞くだけじゃもの足りない…。

側で感じたい…。

あたしの目からは涙の粒が落ちた。

『…俺も会いたいよ。近くで君を感じたい…。でも今声が聞けるだけでも俺は嬉しいよ』

『…雅昭さん』

その言葉を聞いて、あたしは少し元気が出た。

そしてそれからあたし達はいろんな話をした。

会社の事…

学校の事…

テレビの事…

他愛もない話をたくさんした。

その時、雅昭さんが口を開いた。

『舞由香…11月2日空いてる?』

『2日ですか?空いてますよ。どうしてですか?』

『…実は11月、一度そっちに戻るんだ。
舞由香さえ良ければ会わない?』

『はい!』

(やったあー!)

『良かった、じゃあ、一緒に散歩したあの公園で待ち合わせしよう、16時でも大丈夫?』

『はい!大丈夫です!』

『良かったーじゃあ会おう。また連絡する』

『はい!』

そしてあたし達は電話を切った。
< 608 / 642 >

この作品をシェア

pagetop