午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
「そんなこと、ずっと前から知ってる」

カザリナはしばらくじっとしていたが、やがて落ち着いたのか、ゆっくりと腕を緩めた。

それを見計らって、ジュリアは口を開く。

「……広間に戻るわ。そろそろ限界だろうから」

「そうした方がいいわね。……最後に一つだけいいかしら」


――あなた、好きな方はいないの?


予想外の問い掛けにジュリアは動きを止めたが、すぐに小さく吹き出し否定した。

「今まで思い悩むあなたを散々見てきたのよ?
そこらの男と恋愛ごっこをする気になんてなれないわ」

それでは、と向けられた親友の背中を見つめ、カザリナはジュリアに聞こえない程度に小さく呟いた。

「……あなたが誰を選ぼうと、私はあなたの味方だから」







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