月が綺麗ですね。
俺と彼女が共に過ごしたのは、旧校舎の3階の一番端の部屋。


お互いただただ本読んでいるだけの静かな空間は。

今でも周りの青春の音を鮮やかに思い出せるくらいには2人だけの空間だった。


俺と彼女が所属していたのは、"文芸部"。

お互い純文学が好きだという理由で文芸部に入った。
彼女は学年のマドンナとも言われる存在で、深窓の姫君とのあだ名もついている。
確かに静かに純文学を読む姿は、とても美しいと思う。
サラリと肩から落ちる黒い艶のある髪。
それを際立たせるような白い透き通る肌。
常にキリッと伸びた背筋。
伏し目がちな彼女の長いまつげ。
美しいという言葉を体現していると、俺は思うのだ。
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