眠り姫の憂鬱。


「病室どこ?」

「へ?」

「送る」

「あ、うん。ありがとう」


そこから病室までの短い時間、私たちは沈黙を貫いた。

話せばボロが出る。そう考えると口を開けなかった。

代わりに心臓がバクバクとうるさかった。


「私の病室、ここだから」

「うん」

「じゃあね」


手を振ると振り返してくれる。

楓とは部屋の前で別れた。

部屋の中に戻ると深い息が吐き出された。


どうしよう。

私がいるのは小児科だ。高校生の私が肺炎にかかって入院するのが小児科というのは少し考えにくい。

子どもの頃からの疾患があるのではないかと察してしまう可能性は低くない。

しかも身近に喘息を持っている人がいる楓は特に。


いや、でも今日はたまたま会ってしまっただけで、もう会うことはないだろうし。

大丈夫だよね…?


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