眠り姫の憂鬱。
私はえへへと笑みを零してから、ぴょんと小さく跳んで家の敷居をまたいだ。
「お邪魔します」
焦げ茶色のローファーをきちんと揃えて、奥へ入っていく楓を追いかけた。
「ねえ、楓…、」
「お兄ちゃん!玄関でなにしてんの?」
…お兄ちゃん?
聞き覚えのない女の子の声に驚いて楓が先に入っていったリビングと思われる部屋をひょこっと覗き込めば、そこには小学生か中学生かわからないくらいの女の子がいた。
同い年ぐらいの子じゃなくて内心ホッとした。
その女の子は、楓の後ろに私の存在を確認すると睨みをきかせてくる。
「お兄ちゃん…、その人誰?まさか彼女じゃないよね?」
「ちげえよっ!」
そんな大きな声で否定しなくてもいいのに。
薄寂しい気持ちになる。