フレーム
「太一君?」
そうドアの方に尋ねてから、
蛇口を閉めると、
太一君が洗面所のドアを開ける。
「…何してた?」
「え、いや…歯磨き、してた。」
「環奈」
嘘をつくな
そう目で言われているのが分かる。
確かに、歯磨きで首は濡れない。
タオルで濡れたところを拭いて、
下を向いた。
今日だけ。
甘えるのは今日だけ。
目元が熱くなりながらも、
口を無理矢理開いて
「何回洗っても、とれない。
気持ち悪い、ままなの。」
そう言ったんだ。