フレーム






何をされたかを

涙を流しながら話した私の首元に

太一君の手が添えられ、




「助けに行ってやれなくて、悪かった。」




それだけ言うと、

また私の首元から手を離そうとする。



途端に無くなる暖かさが寂しくて、

怖くて、

もうなんだか自分でも分からないまま、




「は、離さないで。」




太一君の離れかけた腕を掴んで

そう言っていた。




「太一君だと…落ち着く、から」




一瞬目を見開く太一君。


そりゃそうだよね。

こんなこと言ったこと無いもん。


少しの沈黙の後、

再び私の首元に手を添え、

太一君は息を深く吐いて言う、




「大丈夫、どこも行かない。

あー…ごめん、目つぶって」


「え?…わ、分かった。」




太一君のその笑顔だけで、

不安だった心が一気に吹き飛ぶ。


……それにしても目をつぶるって、

なんだろ。


何も分からないまま、

おそるおそる目を閉じると…




< 320 / 509 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop