愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
 水菜さんが、鷹野部長の許嫁……? じゃあ、どうして私に許嫁だって言ったの――?

 突然、私の前に現れて、突然、許嫁だと言ってきて、戸惑ってどういしたらいいかわからなかったくせに、いざそんなふうに言われると、どうしようもなく胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちになっている。鷹野部長みたいに素敵な人に優しくされて、きっと私は調子に乗っていたのだ。

 何考えてるんだろ、私――。

 鷹野部長が許嫁なわけないじゃない。からかわれてただけ――。

 なるべく傷つかないように自分で自分に言い聞かせる。けれど、私の胸に開いた風穴を埋めることはできなかった。
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