愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
許嫁の件はすでに部署に広まっているということなのだろうか。けれど、秘書課にそんな話は回ってきていない。もしかして、みんな気を遣って黙っているのかもしれない。
先日、いきなり鷹野部長に許嫁と言われ、躊躇していまだに困惑している自分がいる。それなのに、なぜかそんなふうに言われて、ものすごく嫌悪感を感じているわけでもなかった。
鷹野部長は確かにいい人すぎるくらい、そしてかっこいい。けれど、自分とは雲泥の差。けして見合う人間ではないのに……。そう思っていると、田辺君がハァとため息をついて言った。
「鷹野部長の許嫁の人って、今、鷹野部長と一緒にいる北島さんだっけ? お前と部署が一緒の」
「え?」
「いいよなぁ、あんな美人と結婚できるなんてさ、美男美女でお似合いじゃん」
水菜さんが、鷹野部長の許嫁――?
そう、だったの――?
「おっと、もうこんな時間か。俺そろそろ行くわ、早めに戻ってやらなきゃいけない仕事があるんだ」
「う、うん……」
「お前、なにぼーっとしてんだよ? 昼休み終わっちゃうぞ? じゃあな」
いつの間にかペロっと定食を平らげていた田辺君は、放心している私を怪訝そうに見ると、そのまま席を立ってさっさと食堂を後にした。
先日、いきなり鷹野部長に許嫁と言われ、躊躇していまだに困惑している自分がいる。それなのに、なぜかそんなふうに言われて、ものすごく嫌悪感を感じているわけでもなかった。
鷹野部長は確かにいい人すぎるくらい、そしてかっこいい。けれど、自分とは雲泥の差。けして見合う人間ではないのに……。そう思っていると、田辺君がハァとため息をついて言った。
「鷹野部長の許嫁の人って、今、鷹野部長と一緒にいる北島さんだっけ? お前と部署が一緒の」
「え?」
「いいよなぁ、あんな美人と結婚できるなんてさ、美男美女でお似合いじゃん」
水菜さんが、鷹野部長の許嫁――?
そう、だったの――?
「おっと、もうこんな時間か。俺そろそろ行くわ、早めに戻ってやらなきゃいけない仕事があるんだ」
「う、うん……」
「お前、なにぼーっとしてんだよ? 昼休み終わっちゃうぞ? じゃあな」
いつの間にかペロっと定食を平らげていた田辺君は、放心している私を怪訝そうに見ると、そのまま席を立ってさっさと食堂を後にした。