たった一言を君に
中学2年の頃持病で聴覚を失った。

命には問題ないが、全ての音という音をなくした。
人の声も車の音もプリントの擦れる音でさえない世界に落ちた。

そこは怖かった。


でも、泣けなかった。泣いても自分の声が聞こえないのが怖いから。
叫んでも叫んでも声が鼓膜を揺すらないのを知ったから。

それでも、食らいつくように、進学校に入った。
耳が聞こえないなんて、意外と変わんないって意地を張っていたのもあるが、一番は

"青春"を見たかったから。
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