たった一言を君に
特にサッカー部は私の青春だった。

ゴールする時に、ふざけて漫画を賭けたり、
後輩をいじり倒したり、
お互いに高め合ってずっとドリブルをしていたり、
とにかく、この学校に来た全ての意味を持っていた。


だから、こうして、校庭の前のベンチでカメラを構えた。空が暗くなってきて、もうそろそろ先生が見回りに来る。
そしたら、帰宅部の私は尋問を受けるだろう。
先生と話すのは億劫だ。


帰らなきゃ。


溜息をつき、瀬良君を見る。
一瞬目があった気がした。

ダメだよ。
声を出せない私は君に「好き」が言えないのだから。

瀬良君から目を離して少しの間ぼーっとしてカメラの電源を落とした。
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