眠り姫の憂鬱
一軒家のイタリアンレストランに着く。

先にタクシーでやって来ていた4人の同僚と直属の課長の和田さん(40代の女性。キャリアウーマン風。)が
個室のテーブルに付いて私達を待っていた。

私達がテーブルに着くと、すぐにコース料理とそれぞれノンアルコールの飲み物が運ばれて来た。

「お食事をしながら、ざっくばらんにお話しましょう。」と遠藤さんが言うと、

「雨宮さんは私の部下だったはずです。
事故に遭ったことは知っていましたけれど、誰も面会させてもらえませんでした。
何故ですか?副社長の婚約者だとしても、納得が出来ません。
彼女は真面目で優秀です。なぜ、今、秘書課に異動しなければならなかったのですか?」
と課長の和田さんが怒った口調で聞いている。

「雨宮さんは事故に遭って、頭を打ち、目を覚ますかわからない状態があった。
そして、目が覚めても、誰のことも思い出せなかったんだ。」とショウゴさんが言うと、
皆がざわめいた。

「家族の事も、僕の事も…誰のことも…自分の事すらわからなかった。
だからね…受付の仕事や、人事部の仕事は無理だって判断したんだ。」

「…私のことも…思い出せないんですね…」と矢野さんが涙ぐんでいる。

「…みなさん、申し訳ありません…」と私が頭を下げると、

「でも、雨宮さんは事故の後のことはキチンと覚えているよ。
矢野さんの事も…さっき会ったから…これから、また、仲良くして欲しい。」とショウゴさんが言って、

「食事をしながら話しましょうか?
2時間、業務として時間をとってありますけど…お腹が空いているでしょう。」
と遠藤さんが全員に微笑みかけてゆっくり食事が始められた。

「雨宮さん大変だったわね。…異動の件は承知しました。」と和田課長がため息を付いて声を出す。

「ご迷惑をかけます。」と言うと、

「記憶が戻らなくても、大丈夫かな。副社長も、遠藤君も付いているしね。」





< 32 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop