眠り姫の憂鬱
転んでぶつけた膝が痛い。足首もひねっているかな…

私はゆっくりゆっくり歩いている。

何処に向かっているのかわからない。

夜の道を歩きながら気持ちを落ち着ける。



スマホには着信がいくつもある。

寺田さんと遠藤さんだ。もちろん、ショウゴさんからも…

またショウゴさんの着信だ。

もう、何度目かの着信かわからないくらい電話は鳴り続けている。



「…はい。」とぼんやり電話に出ると、

「美月、何処にいる?」とホッとしたため息が聞こえる。

「酔っ払って迷子になっちゃった。転んで足も痛いし…どこに行ったらいいかわからないの…」と呟くと、

「…わかった。近くにコンビニはあるか?そこで住所を聞きなさい。このまま電話を切るなよ。」

「…ごめんなさい。」

「無事ならいい。電話に出てくれてありがとう。」

「…なんでそんな事を言うの?」

「美月には窮屈な生活だったな。たまには羽を伸ばしたいだろう?
…いいんだ。俺のいる所に帰ってくれれば…」

「…私はどうしたらいいの?」

「俺のそばにいてくれ」

「…私達は恋人?」

「そうだ。愛してるよ。美月」

「…私もショウゴさんが好きです。」と嗚咽がもれる。

コンビニについて住所を聞いて教え、ぼんやり外で待つと、黒塗りの車がすぐにやって来た。

ショウゴさんが急いだ様子で車から降りて私を固く抱きしめる。

私はそのまま、気を失ってしまったようだ。





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