Candy Basket



「つまんねぇから、抜けてきた」

ぼそりとつぶやかれたその言葉に、私の目がつり上がる。


「は?」

「だって、真希がいないとつまんねぇよ」

翔悟は怒ったようにそう言うと、私の手からスマホを奪いとった。


「何?」

意味不明の翔悟の行動に眉を潜め、奪われたスマホに手を伸ばす。

だけどその手は翔悟に捕まり、私は倒れかかるように彼に抱きしめられた。

慌てて翔悟を押し返すけど、彼は私を逃してくれない。


そのとき、翔悟の手の中で私のスマホが鳴った。

その音を遮るように、翔悟が私に囁く。

「やっぱり他のやつじゃムリ。俺、真希が好き……」


耳にかかる熱い吐息に、心が揺れる。


翔悟の腕の中、スマホの着信音がどこか遠くで鳴り響いていた。



【Fin】


< 69 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop