Candy Basket


ムッとしたように眉を顰めた坂井くんが、ぐんと私に詰め寄ってくる。


「先輩、まだあの人と付き合ってんだ?」

頷くと、坂井くんが私の両肩を掴んで教室の窓に押し付けた。


「坂井くん」

肩を払おうとした私の手を、彼が捕まえて自分の唇へと引き寄せる。

急に指先にキスされて、身体中がかっと熱くなった。

動揺する私を見て、坂井くんがくすりと笑う。


「言ったよね?次にここに来たときは、俺、マイ先輩の相談にはのらないって」


高校時代、彼氏と喧嘩して落ち込み私を励ましてくれたのはいつも後輩の坂井くんだった。

彼の存在は密かに私の支えになっていた。

今日ここにやって来たのは、不意にそのことを思い出したせいかもしれない。


俯いた私の顎先に坂井くんの指がかかる。

上を向かされた私の唇に、彼の唇が落ちてくる。

それを受け止めるために、私は目を閉じた。



【Fin】



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