今から一つ嘘をつくけど
 綾子さんは目が合うと、にっこりと笑顔を返してくれた。

 何だか……何だか急に恥ずかしい…………


「じゃあ、これで全部解決かしら? あたし、帰るわね」


 綾子さんはそう言いながら立ち上がった。


「ちょ! ちょっと待てよ! もう帰るのか?!」


 綾子さんのいきなりの行動に、諏訪さんも私も慌てて立ち上がった。


「だってもう、あたしのやる事なんて無いじゃない。これ以上ここに居座って、野暮な事したくないわよ」

「ま、まあ……そうだけど……」

「ずっと、しずくんの部屋でお世話になってたけど、今夜はホテルで寝るわ。明日アメリカに帰らなきゃいけないしね。部屋に置いてある荷物は明日発つ前に取りに行くから」


 彼女はそう言いながらひらひらと手を振って、玄関へ。諏訪さんもその後を追った。


「じゃあ、車で駅前まで送るよ」

「大丈夫! 子供じゃないんだから、タクシーぐらい拾えるわよ。あ、そうだ――――」


 綾子さんは言葉を切ると、諏訪さんの後ろにいた私と目を合わせた。その真っ直ぐな大きな瞳が奇麗で、何を言われるのかとちょっとドキドキ。


「あなた……神楽木 晃ちゃん、よね?」

「は、はい!」

「あなたのお姉さんが晴夏と結婚してくれるのよね。うちはむさ苦しい男ばっかりだから、可愛らしい二人が家族になってくれて、本当に嬉しいわ。孫も生まれるって言うし、末永くよろしくね」

「い、いえ、こちらこそ……」

「それと…………」


 綾子さんは今度は、諏訪さんの方をチラリと見る。




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