今から一つ嘘をつくけど


「静夏の事も、よろしくね。この子さっき、あなたに勘違いされたー! って慌てふためいてて大変だったの。あんなの母親ながら初めて見たわ。相当あなたの事が好きみたいよ」

「ええっ?!」

「ちょ! 母さん!」


 諏訪さんが真っ赤になりながらたしなめるような慌てたような声で、綾子さんの言葉を遮ったけど。綾子さんは悪戯したみたいにぺろりと舌を出す。




 ――――相当、私を好き…………




 顔が、勝手に熱くなる。


「――――それじゃあね、次ははるくんの結婚式で会いましょう!」


 朗らかに笑いながら綾子さんはそう言って部屋を後にした。


 綾子さんが去って、急に静かになった室内。私と諏訪さんは改めて座る。


「……まったく、相変わらず嵐みたいな人だな」


 諏訪さんはお母さんの綾子さんの事を呆れたようにそう言ったけど、私は確信していた。晴夏さんがのんびりしてて優しい雰囲気なのはきっと、お父さんの遠野先生譲り。諏訪さんの、人を引き付けて巻き込む嵐のような性格は、絶対お母さん譲りだ。

 そう考えるとちょっと可笑しくて笑ってしまった。

 つられて諏訪さんも笑いだしたけど、私が何を考えていたのかはきっと分かってない。たぶん、綾子さんの事を笑ってるんだと思ってるんだろう。それがまた可笑しくて、更に吹き出してしまった。




















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