今から一つ嘘をつくけど
 結婚式はお昼からだけど、私は姉とバージンロードを歩く。だから打ち合わせとリハーサルの為に早く行かなければいけなかった。他にも、親戚が来たり何だりで、今日は大忙し。姉は妊娠中だから負担をかけないように、私も頑張らないとならない。

 こんな日に遅刻なんてしたら、普段温厚な姉にも本気で怒られる……


 シャワーを浴びて髪も乾かしながらセットして、すっかり着替えてバスルームを出た。後はお化粧だけだ。部屋へ戻ると諏訪さんは、起きてはいたがパンツ一枚の姿でベッドの上で呑気にあくびをしていた。


「諏訪さん! 本気で急がないと! 諏訪さんも晴夏さんに怒られますよ!!」


 私の焦りとは真逆に、はいはいと気の抜けるような返事をすると、やっと彼はベッドから抜け出す。そして私を入れ違いにバスルームへ入って行った。

 バスルームから出て来たのは、私がお化粧もすっかり終わった頃だった。髭も剃ってたし着替えも済ませていたけど、まだワイシャツのボタンは開けっ放し。ネクタイは手に持ったままだし、靴下も履いて無い。

 急がなきゃいけないのに!


「諏訪さん! 本当に早く支度してください!!」

「…………やだ」


 はああ?! 何を言い出したんだ、この男は!

 イラつく私を尻目に、諏訪さんはソファに座ってしまった。

 付き合ってまだ三ヵ月。彼は時々こんな訳の分からない行動で私を翻弄する。まあ、それは付き合う前からだけど……




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