今から一つ嘘をつくけど
 とりあえず一応私の為にいろいろしてくれた諏訪さんに、お礼を言って帰ろう。

 そう思い、私は立ち上がると部屋を出た。


 部屋を出て廊下の突き当りが一番広い部屋みたいだ。きっと諏訪さんはそこにいるんだろうと進む。

 そろりとその部屋の扉を開けると、やはり広い。ドアから正面は一面窓になっていて。部屋の左側はキッチンスペース。右側にはソファやテレビが置いてある。

 今までいた部屋は結構乱雑だったのに、この部屋は思ったより奇麗だった。

 キッチン側には姿が無かったので、ソファの方へ行ってみる。するとそのソファに、諏訪さんが寝ていた。

 ソファのひじ掛けに頭と反対側に足まで乗せて。自分の家だからか、Tシャツに楽そうな綿ズボンで裸足。寝てしまうまで読んでいたみたいな本がお腹に乗っていた。


 ……また寝てる。


 まあ、今回は自分の家だから当たり前だけど。私はもう何回この人の寝顔を見ただろう。

 会う度に見ている気がする。

 強引で図々しくて、でもさりげなく優しかったり。仕事に関しては真面目みたいだし。顔がいいだけじゃなくて、そんな所がきっと女の子に人気がある理由なんだろう。

 出逢ってまだそれほど経ってないのに、私ももう何度もそれを感じた。


 あんまり気持ちよさそうに眠っているから、起こさないでこのまま帰ろう。そう思って最後に小さな声で呟いた。


「ありがとうございました……」

「――――どういたしまして」


 すぐに帰って来た返事に、飛び上がる程驚いてしまった。諏訪さんが、ゆっくりとソファから身体を起こす。


「起きてたんですか?!」


 酷い! ずるい!

 こんなの反則だ!!




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