今から一つ嘘をつくけど


「それにそれに! みんな独身恋人無しです! これはチャンスですよ!!」


 少し興奮したような海莉ちゃんの姿に、ああ、と納得。彼女が恋愛スイッチONだという事は、これは『食事会』という名の合コンだ。

 でもどうして私を誘ったんだろう。今は失恋したばかりでちょっとまだ、そういうのに興味がわかないんだけど……


「晃さん、最近少し元気ないから、だから誘ったんです! 今回はスペシャルゲストも来るので、行きたいって人多かったんですよ~! でも晃さんの為に、一人分開けておいたんです!」

「スペシャルゲスト?」

「そうです! そのゲストさん、いつもはこういうのほとんど参加しないんですけど。今回はどうも、失恋したばかりみたいで……それで工藤さんが強引に誘ってくれたみたいですよ」

「……一体、誰なの? その人」

「ナイショです! 興味出たなら行きましょう! 晃さん!」


 グイグイと押しの強い海莉ちゃんに負けて、私は渋々参加する事になってしまった。

 ……でも、私と同じ境遇の『スペシャルゲスト』さんには少し興味がある。

 掃除を手早く終わらせると、海莉ちゃんと二人で皆がもう待っているらしいお店へ向かった。





 お店は、駅前でわりと近かった。個室のあるアジアンレストラン。アジア調の店内には、ウクレレの音楽が流れて。アジアなんだか南国なんだか、ちょっと微妙な雰囲気。でも店員さんは明るくて親切だった。

 店員さんに案内されて行くと、部屋の中には既に集まった皆が座っていた。




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