今から一つ嘘をつくけど
「――――食事会?」
その日は遅番で、海莉ちゃんと一緒に閉店作業をしている最中だった。お店の入っているショッピングビルは、レストランフロア以外は閉店していてお客はいなく、軽い店内の掃除をしていた所。
これが終われば今日の仕事はお終い。後は帰るだけだった。
「食事会って言っても、まあ、飲み会です。この前ヘルプに来てくれた、工藤(くどう)さん覚えてます?」
「ああ、本社の?」
先日、お店でちょっとしたセールがあった時。人手が足らなくて本社から一人、販売応援の女性が来てくれた。
その人が確か、工藤さんって言ってたな。
「そうです。その工藤さんが本社で声を掛けてくれて、人を集めてくれたんですよ」
そういえばあの時、海莉ちゃんと工藤さん妙に気が合って盛り上がっていた。二人で何を話してるのかと思ってたら、そんな事を計画してたのか……
「本社の人と飲む機会なんて、ほとんど無いじゃないですか! だから、晃さんもこれから一緒に行きませんか?」
「うーん……どうしようかな…………」
明日も遅番だから、ちょっとぐらい遊んでも問題は無い。でもあまり乗り気ではなかった。
だって本社の人となんて、仕事の延長でしかなさそう。
「行きましょうよ! 集まるの、若い社員さんばっかりだし、しかも全員男性ですよ! 女の子は私と工藤さんともう一人バイトの子だけで、あと一人ぐらいいないと、バランス悪いんですよ!」
海莉ちゃんははっきりしない私に、ぐいと身を乗り出した。