天使の傷跡
「そう睨むなって」
「そんなの無理ですっ!」
即答した私に苦笑いしながらどうどうと宥めようとする上司が本気で恨めしい。
そんなのほんとに無理に決まってるでしょう?!
だって、だって…!
結局、鳩豆状態の私はあれよあれよと車に押し込まれ、いつの間にかしっかりと予約されていたイタリアンのお店へと連行された。
頭の中は完全に何が何だか、だ。
「緊急事態だって言うから何かと思って生きた心地がしなかったんですよ! それなのに、まさかこんな…」
実は仕事でもなんでもなかっただなんて。
こんな騙し討ちみたいなことするなんて、ひどい。
「それはほんとに悪かったよ。…でもそうでもしないとお前来なかっただろ?」
「…え?」
「俺が誘ったところで絶対にデートなんてしてくれないだろ?」
「っ、それ、は…」
もごもごと視線を逸らして俯いてしまった私に、視界の隅でまた課長が苦笑いする。