天使の傷跡

「そんなの、困ります…」

だいたいどうしてプロポーズなの。
どうして私なの?

「水谷。顔を上げて」

「……」

見ては危険。そうわかっているのに、体はその声に逆らえない。

「…ほらな。だからだよ」

「…? 何が、ですか…?」

戸惑いがちにゆっくりと顔を上げた私に、課長は確信めいたように頷く。

「水谷の顔を見てたらわかるんだよ。俺の一方的な想いなんかじゃないって」

「…え?」

「お前だって本当は俺と同じ気持ちでいる。違うか?」

「…っ!」

ズバリ言い当てられてドクンッと心臓が大きく音をたてる。
真っ直ぐ見つめる眼差しから逃げるように視線を逸らした直後、それじゃあ動揺しているのを認めたも同然だと後悔した。

「お前は口数が少ない奴だが、その分そこはかとなく表情に出てるんだよ」

…何が? と聞き返したいのをぐっと堪える。
これ以上課長の目を直視していては駄目だ。

< 15 / 100 >

この作品をシェア

pagetop