天使の傷跡
「俺だってバカじゃない。いくらなんでも勝算もなしに、ましてや部下相手に一方的に暴走なんてしない」
「……」
「お前をずっと見てきたんだ。だからこそ一歩も引く気はない」
その言葉には少しの迷いもなくて。
気がつけばゆっくりと顔を動かしてしまっている自分がいて。
ずっとって、一体いつから…?
「何度でも言う。俺はお前が好きだ。結婚するなら水谷しかいない。お前がそれを受け入れるまで引く気はないし、絶対にイエスと言わせてみせる」
「…っ!」
正面から視線が絡み合った瞬間見てしまったことを後悔すると同時に、金縛りに遭ったように動けなくなった。
「…とはいえお前の気持ちをないがしろにするつもりもない」
「…え?」
息も止めたまま硬直していた私に、フッと課長が表情を和らげる。
…まるでそれが私の一番好きな仕草だと知っているかのように。
「水谷にとってはいきなりのプロポーズだろうが、俺にとってはそうじゃない。ずっと、ずっと考えていたことだ。結婚願望なんて少しもなかった俺にここまでさせたお前を逃がすつもりはないし、お前の俺に対する気持ちに自信だってある」