飛べない鳥に、口づけを。




樹君は目を丸くしてあたしを見る。

その後考え込むような表情になった。

そして、ゆっくりとあたしに告げる。




「菜緒ちゃん……

俺さ、菜緒ちゃんに言わないといけないことが……」



「知ってるよ」




努めて平静を装う。



あぁ、樹君は彼女の話をするんだ。

あたしの気持ちを知っていて、牽制をかけるつもりかもしれない。

だけど、もうその必要はないんだよ。


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