飛べない鳥に、口づけを。





「樹……さん……」




思わず声に出したあたしを見て、いっちゃんこと樹さんはにこっと笑った。

相変わらず爽やかなその笑顔から、目が離せなくなる。




「これからも、祖母をよろしくお願いします」




樹さんは一礼して去っていった。

松葉杖をついて、ゆっくりと。

そんな樹さんを、近くの患者がずっと見ていた。

松葉杖で目立つのかもしれないし、イケメンだからかもしれない。




患者とともに、樹さんの後ろ姿をボケーっと見ていたあたしは……

はっと我に返った。




あたし、負傷中の樹さんを薬局まで来させて、なに一人で帰らせているんだろう!

せめて、近くまで送り届けないと!!


< 21 / 252 >

この作品をシェア

pagetop