飛べない鳥に、口づけを。




近くに座っていた患者が、耐えきれないようにふふっと笑った。

そして……

いっちゃんは一瞬ぽかーんとした表情を浮かべたが……満面の笑みになる。

すごく楽しそうで、無邪気な子供みたいな笑みだ。

その笑顔を見て、一瞬胸がズキュンと音を立てた。

訳の分からない胸をひっ掴み、真っ赤になっていっちゃんを見ているあたしに、彼は言う。




「川口さんって面白いですね。

……天然?」





てっ……天然だなんて!!



どぎまぎして何も話せないあたしを笑顔で見ながら、いっちゃんは続ける。




「俺は小沢樹(いつき)といいます。

いっちゃんなんて呼ぶのは、祖母だけです」


< 20 / 252 >

この作品をシェア

pagetop