飛べない鳥に、口づけを。





分かっていることだが、あたしと樹君では恋愛偏差値が違いすぎる。

樹君には、手を繋ぐことくらいどうってことないのだろう。

だけど、樹君があたしに合わせてくれていることも理解している。

恋愛初心者のあたしに合わせて、二人の関係はゆっくり前進しているのだ。





「明日は俺、やっと試合に出られるかもしれない」




樹君の言葉に、胸を踊らせる。

長い長い休養期間を経て、樹君はようやくピッチに立つことが出来るんだ。

DVDの中でしか見たことのない樹君の勇姿を思い出して、胸が熱くなる。

きっと、サッカーをする樹君はかっこいいんだろう。

あたしの予想よりも、ずっとずっと。


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