飛べない鳥に、口づけを。





あたしはやっぱり機転の利いた返事なんて出来ず、



「そっ……そうなんですね!」



なんて言葉を返すだけだ。

そして、頭の中で樹さんの言葉を反芻した。



「両親が健在の時……」


そう、小沢さんも言っていた。

樹さんの両親は、数年前に亡くなってしまったのだと。

小沢さんが頼れる人は、もう樹さんしかいないのだと。

そして樹さんも……




さらっと言ったが、きっとすごく苦しんでいるのだろう。

自身の怪我に、両親の死に。

そんな話は重すぎて……そう、また失言によって樹さんを傷つけてしまうかもしれないと思って、あたしはぐっと口を噤んだ。


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