【短】親愛なる片想いに口づけを

日曜の今日もきらるんを呼び出して、森瀬くんの尾行をしに街のショッピングモールまでやって来た。


声の大きさに注意しつつ、ベンチの裏にある生垣に身を隠して、道の向こうのカフェにいる森瀬くんを観察する。


森瀬くんは高校で一番のモテ男。でもそれを鼻にかけないクールさを兼ね備えている。

友人と談話しながらコーヒーを飲む仕草も、モデル並みにかっこいい。


「はぁ。コーヒー飲むのがあんなに様になるのは森瀬くんだけだなぁ」


「ほんと呑気だよね。森瀬にバレたら僕まで恥かくんだけど」


双眼鏡を覗いていると、きらるんが不満を洩らしたのが聞こえ、私は再び体制を戻して隣を見やった。


膝に頬杖をつき、行き交う人々をつまらなそうに見つめるきらるん。


右目下にある涙ぼくろが、帽子の影からちらりと覗いている。

いつ見てもセクシーだなぁなんて、能天気に思う。


「っていうか、なんで正々堂々告白しないんだよ。莉珠ってガンガン攻めるタイプだと思ってた」


「告白する勇気なんてないもん。だけど、そういう印象持たれないんだよね。きらるんも私のこと苦手だったでしょ?」


クラスで一番派手なグループに属してる私と、クールな一匹狼的存在のきらるん。

私達は、正反対だ。
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