由良先輩はふしだら


「約束は守るよ。ただ本当に、今日の美子可愛いって思ったから」


「……っ!」


だんだん火照り出す顔が恥ずかしくて、とっさに目をそらす。


先輩のそんな言葉は、私が思ってるよりもずっとなんでもないことぐらいってわかってる。


経験豊富な先輩のことだ。
こういうこと、サラッと無意識に言っちゃうに決まってる。


なのに、不覚にも嬉しくなってこんな風に赤くなるのが恥ずかしい。


「先輩の方が、ずっとずっとかっこいいですから!!い、行きますよ!」


きっと私だけがうんとドキドキしている。
先輩にとって、あまり意味のないことだろうけど。


それがほんの少し悔しくて。


クルッと身体を駅の出入り口に向けて、歩きだす。


「待ってよ、美子」


グイッと後ろに手が引っ張られたと思ったら、そんな声が聞こえて。



気付けば、私の右手は先輩の左手に包まれていて、
隣からフワッと大好きな香りが鼻をかすめる。


「置いていかないでよ」


優しくそう呟く彼にまたキュンとさせられて。


本当にずるいってば先輩。


ドキドキと心拍数急上昇の中、私と先輩の初デートが始まった。


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