由良先輩はふしだら


「だから、常に愛菜に追いつきたくて必死で。……すげーイタいぐらい、必死だった」


勉強も、運動も、頑張って、早く大人になりたくて。年の差なんて俺がどうにかできるものではないのに。


「愛菜が教師になって、さらに遠くに行った気がしてまた焦って。でも、愛菜との今までの関係を壊すのが怖くてずっと告白できなかった自分もいて、そんな自分もだせーなって」


「……」


俺の話を、ただ黙って聞く彼女の横顔は、明らかに大人の顔で。


「婚約したって聞いて余計ムシャクシャした。あの人に、愛菜を取られたと思って。もうそれからはなげやりで。美子に告白された時はちょうどその時だったんだ」


「そっか……」


「俺と違ってすっごくまっすぐで。俺の愛菜への気持ちを知ってもずっと隣にいて笑わせてくれた子。美子の前では全く作らないで、素でいられるんだ」


そう言いながら、美子のキラキラした笑顔を思い出して、顔が自然と綻ぶ。


< 281 / 300 >

この作品をシェア

pagetop