HARUKA~愛~
3年生になって2週間が経ち、ようやく桜が見頃になり始めた頃。



最初に動いたのは彼女だった。


「あのさ、修学旅行の班なんだけど、あたしとはるちんプラスそれぞれの仲良しさんで班を作りたいと思うんだけど、良いよね?」


有無を言わせない目つきに、私はただただ従った。

くりくりお目めは今年も健在らしい。


「はるちんは、あの2人だよね~。あたしはどうしよっかなあ~」


彼女は適当にリズムを付けて、どうしよっかなあ、どうしよっかなあ…としばらく歌っていた。

ピタリと歌が止んだ時、彼女の目の前にヤツが通りかかった。

すかさず彼女はヤツの左腕を鷲掴みする。

驚いた表情でヤツが振り返るが、私の知っているヤツじゃない気がした。
トロンとしていっつもニヤニヤ、ヘナヘナしている感じだったのに、今は緊迫した表情で、思いつめているような暗いオーラを放っている。

それにヤツは…


「げんきさ、修学旅行、あたしと一緒の班にならない?もちろん、げんきのカノジョさんも一緒で良いからさあ。…お願い!幼なじみの高校生活最後のお願い、どうか聞いて下さい!」


ヤツは「うん、いいよ」と淡々と口にした。

彼女は、天井に頭がつきそうなほどに飛び跳ねた。


「じゃあ、5時限目、初の顔合わせだね!2人共よろしくね~」


彼女はそう言い残し、遠く離れた自分の席へとスキップしながら戻って行った。








キーンコーンカーンコーン… 

キーンコーンカーンコーン…







授業開始5分前のチャイムが鳴った。

ヤツは何も言わずに立ち去る。







私は…









何か言おうとした。

何か言いたかった。

何か言わなきゃならなかった。







なのに実際はヤツの背中を見つめるだけで何もできなかった。









ヤツは、もう…








「ハル、授業始まるよ~」

「アオハル、どこ見てんだよ!ちゃんと準備したのか?」


昼練帰りにパンを買ってきた2人に声を掛けられ、我に返る。

ヤツは遥奏の後ろの席に大人しく座って、ホワイトチョコにかじりついていた。








 
『はるちゃんも食べる?』

『要らない。アンタ1人で食べれば?』

『ホントはほしいくせにぃ。はるちゃん、強がりだねぇ』









2年前の昼休み、よくヤツは私にチョコをくれようとした。

いつもいつも、いっちばん甘いホワイトチョコで、私は受け取りを拒否していた。











だけど、今はもう…










キーンコーンカーンコーン…

キーンコーンカーンコーン…







「やべえ、早く席着かねえと!!」


そんなこと言ってる暇あるなら、さっさと行動すれば良いのに。

まあそれが彼らしさか…。



宙太くんは相変わらずうるさかった。

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