プレシャス~社長と偽りの蜜月~
PART11*戻したい記憶
一番心配してくれた母に二人で『産む』と報告。


相良夫妻も私の妊娠を喜んでくれた。
「私は今日も休むけど…頑張ってね。雅人」


「ああ、いってくるよ。朱音」

悪阻で苦しむ私の額にチュッと軽くキスをして雅人は出社していく。


悪阻には個人差があるらしいが、私は吐きたくても吐けない気分の悪さが1日中続いて体重も減少し、仕事処ではなかった。

ベットに一人で残り横たわる私。

でも、私は一人じゃない。
私の中には雅人の子がお腹の中に居る。

この世を去ってしまった仁志には申し訳ないけど、私は生まれて来る新しい命の為に生きたい。


「入るわよ。気分がどう?朱音」

母が私に朝食を運んでくれた。

口に出来る食べ物は限られている。今、口に出来るのはグレープフルーツやオレンジと言った酸味のある果物。

妊娠すると酸っぱい物が欲しくなると言うのは本当の話。

母は私を身ごもった時は、よく酢の物を好んで食べていたと言っていた。


私は起き上がってオレンジを頬張る。


「誠一さんも天国で悔やんでいるわよね。初孫の顔を見れなかったって・・・」


「そうね」








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