恋の人、愛の人。
・ジレンマ


ブー、…。『ハルちゃん』

【会って話がしたい。夜は出られるかな。晴海】

あ、部長。…何か特別な話だろうか。…嫌だ、ドキドキし始めた。暫く普通だった。こんな…不意打ちって狡い。

【今夜、今からという事でしょうか】

落ち着かない…。ざわざわする。いつかはっきりしてないとずっと緊張が続いてしまう…ふぅ…はぁ。

【いや、今夜でなくても構わない。話がしたいと言ったが、急いでいるとか、特別な話があるという事ではないんだ。ただ会いたい】

…。あ、…それは。

【特別な事だと思います】

【いや、別に話したい事が明確にあるとかではないんだ】

だからです…。ただ会いたいという事が特別なんです。そんなフレーズで…ドキドキさせないでください。

【今夜もですが、私はいつでも用があるという事はありません】

【それは今からでも都合がつくという事かな】

【都合がつくと、どうなんでしょう】

【直ぐ行く】

え?あ、待って?

【もしかして、もう下に居るのでは?】

【居る】

…。大変…。急いで電話を架けた。

「…はい」

「あ、すみません、長くなりそうだったので。いいとしても直ぐは困ります。少し時間をください。あ、でも、少しでは足りないかも知れません。お化粧も落としてますし、着替えだってしないといけません。伺いを立てられても、やはり、夜、急というのは難しいですね。支度で待たせてしまいますから。そうなると、夜は時間も限られています、もう今日はいいかってなりませんか?…」

「私はどちらも出来るがな」

…ぁ、低いいい声…え、あ、どういう意味?…。

「支度をする時間、待てる。元々そんな事ではなく、何も聞かずに来いよと思っていたのなら、直ぐ行く」

…。

「では、待って貰ってもいいですか」

「待たない」

プ。あ。…切れた。え?
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