あの日みた月を君も
「おこがましいことを言ってごめん。僕が結婚したことはマサキから聞いたの?」

アユミは無言でうなずいた。

「別に隠すつもりはなかったんだ。今日会ったときに話そうと思ってた。」

「ソウスケは素敵だもの。きっと結婚してると私も思ったわ。だから本当はこんな風に2人で会っちゃいけないってこともわかってた。だけど。」

アユミは寂しそうに微笑んだ。

「会いたかったの。」

僕の胸がドクンと大きく震えた。

全身に電気が走ったみたいに。

今すぐにでもアユミのこの小さな体を抱きしめて、どこか遠い所へ連れ去ってしまいたい。

そんなことできるはずもないのに。

「僕も、会いたかった。ずっと。」

しばらく見つめ合った。

この目が離れたら、もう2人のこの気持ちは永遠に断ち切られるような不安に襲われる。

アユミは視線を落とした。

「私の話、聞いてくれる?」

「うん。」

「少し長くなるけど。」

「構わないさ。ハンバーグはたっぷりある。」

アユミはくすっと笑って、上目づかいで僕を見た。
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