あの日みた月を君も
「あそこのカフェだよ。」

駅前に近づくと、私はカフェを指刺して言った。

「うわ。なんだか緊張してきたよ。」

カスミの頬がピンクに染まった。

「とりあえず、顔合わせるまでは一緒に行くから。」

私はカスミの背中を軽く押して、店内の入り口を入って行った。

ヒロは予想通り、前座ってた角の席に本を広げて座っていた。

ヒロの前にはカフェラテが置いてある。

ヒロの座るテーブルの真横に私達が並んだ時、ようやくヒロが顔を上げた。

「やぁ。」

私を見て相変わらず無愛想な表情で言うと、カスミの方に視線を向けた。

カスミには何も言わず軽く頭を下げるだけだった。

「天体観測部のこと、今日はしっかり色々教えてあげて。」

「ああ。」

ヒロは持っていた本を閉じると、背もたれに置いていた自分の鞄に本をなおした。

「よろしくお願いします。」

カスミは妙に礼儀正しく挨拶すると、ヒロの前に座った。

すると、ヒロは立ったままの私に目を向けて、

「君は座らないの?」

と尋ねた。

嘘ってね。

苦手なんだよね、昔から。

心の中で深呼吸した。

「ごめん、今日は急に中学時代の友達に誘われてそっちに行かなくちゃならなくなったの。」

ばれてないだろうか。

目は泳いでない?

ヒロはそんな私をじっと見つめていたけれど、

「そうなんだ。」

と言っただけだった。

なぁんだ。

もうちょっと残念がってくれるかと思ったけど、なんだか拍子抜け。

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