あの日みた月を君も
「今日はソウスケに会えて嬉しかったわ。これで会うのは最後にしましょう。これくらいなら罰は当たらないわよね。」

アユミは真面目な顔をして言った。

会いたかったアユミとは、今日で最後なんだ。

アユミの目にはその決意の固さが表れていた。

「そうだね。」

「だけど。」

アユミは続けた。

「もし、ソウスケやあなたの大事な家族が病気になったときは私のいる病院に来て。それくらいの支えにはなったって構わないわよね?」

「なんだかえらそうだな。」

僕は思わずその得意げなアユミの表情を見て笑ってしまった。

「そんな風に笑ってるけど、病院では私の言うことはちゃんと聞いてね。」

「君のいる病院にだけは入院したくないなぁ。痛い注射を毎日されそうだ。」

「私、注射打つのうまいのよ。」

アユミは、僕の知ってるアユミの表情で笑った。

僕の大好きなえくぼを作って。

会計は僕が払って、駅でアユミとは別れた。

時計を見ると21時過ぎ。

今日はまっすぐ家に帰ろうと思った。

アユミと久しぶりに会って話して、僕の何かが変わったような気がしていた。
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