あの日みた月を君も
すたすたと歩くヒロの後ろを追いかける。

歩幅広すぎるっての。

必死にヒロの背中に着いて行ったら、急に止まってこちらにくるっと顔を向けた。

あぶなー。

危うくヒロの胸にぶつかるところだったじゃない。

「一体なんなの?」

思わず口調が荒くなる。

「とりあえず詳しいことはまたゆっくりと話すことにして、えっと近藤さんだっだっけ?あの前髪の短い子。天体観測部には入らないみたいだから。」

ヒロは私を見下ろして、冷静な声で言った。

「どうして?カスミ、すごく入る気満々だったのに、あなた何か言ったんじゃない?」

「何か言った?言ったっていうか聞いただけだ。」

「聞いたって何を?」

「君と本当に仲良しなのかどうかってこと。」

「仲良し?何よそれ。」

「君経由で部活に入りたいっていうことは、君と親しいからじゃないとおかしいだろ?親しくないなら何か別の理由があると思って。」

あったわよ。

ヒロのことを気に入ってるからよ。

言いそうになって、どこまで聞いたのかわかんないから黙ったままヒロの視線から目をそらす。

「色々聞いてたらさ、近藤さん面倒臭くなったみたいで。もういいってさ。」

「そうなの?」

「うん、それだけ。まぁ、部員数は必要だから名前は貸してもらうようにお願いはしといたけど。」

「ちゃっかりしてるわね。」

「天体観測部、絶対発足させたいからね。」

ヒロは腕時計を見た。

「もうすぐチャイム鳴るな。この続きはまた時間作って話そう。」

時間作って話そうって、また2人で会うってこと。

ヒロは微笑むと、教室の方へ戻って行った。

また2人で会うんだ。

昨日、カスミと3人で会った時の、胸がぎゅーっと苦しくなるような息苦しさを感じることはないんだ。

って、まるで2人で会うのを心待ちにしてるみたいじゃない?

ヒロの後ろ姿を見ながら、2人で会えることにワクワクしている自分に驚いていた。
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