あの日みた月を君も
思い切ってカスミに尋ねてみた。

「で、昨日はどうだった?部活には正式に入る?」

カスミは鞄から教科書を取り出しながら、上目遣いで私をちらっと見た。

「ううん。やっぱりやめとく。」

「え?入らないってこと?」

「うん。」

それからは、私と目を合わさない。

それ以上、聞いちゃいけない空気がカスミと私の間に流れる。

どういうこと?

隣に座るヒロの方を見るけど、聞こえてるんだか聞こえてないんだか、素知らぬ顔でまだ尚も小説を読んでいた。

あれだけ騒ぎ立てて、私がつないであげた縁をこうもあっさりと「やめとく」って。

いくらお人好しの私でもムカムカするっての。

「何があったんだか知らないけど、カスミのその態度、私に対してちょっと失礼だと思うわ。」

思わず言ってしまった。

顔がかーっと熱くなって、心臓がバクバクいってる。

あんまり友達と険悪な雰囲気になるっていうのは好きじゃないんだけど。

いや、カスミが私の本当の友達かといえば、そうでもないからいいか。

「ごめん。」

カスミは明らかにふてくされた顔で私に謝った。

そんな謝り方なら謝らなくたっていい。

何かあったんならきちっと私に報告すべきなわけで、それをすっとばしてのこの態度は絶対間違ってるんだから。

だけど、なんとか気持ちを飲み込んで、口をびったりくっつけた。

その時、ヒロが読んでいた文庫本をパタンと閉じ机の上に置いた。

そして、教室の前の時計に目をやると、「まだ時間あるな」と言って私の方に顔を向けた。

「ちょっといい?」

「え?」

そう言った私の声にカスミの声がシンクロした。

カスミは困ったような顔でヒロを見つめている。

ヒロはそんなカスミの方には目もくれず、立ち上がって私に「来て」と言った。


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