あの日みた月を君も
「学園祭でリョウ達は何するわけ?」

「えー。なんかさ、うちの担任がえらく熱いタイプでさ、学園ドラマ的な映画を作ろうって話で盛り上がっちゃって。」

「映画?すごいじゃん。リョウは映画に出てるの?」

あー。

ショウコに話しながら、また凹んできた。

またもや例のカスミが首突っ込んできて、私となら一緒に何らかの配役で出演してもいいとかほざきだして。

私的には音響だとか、小道具作りだとか、絶対裏方志望だったにもかかわらず。

カスミが単に出たいだけでしょ?って感じなのに、私まで勝手にひっぱり出してきたんだ。

「嫌です」って言ったのに、またあの担任が「そんなこと言わず、何でもやってみよう!」なんて言いだして。

そしたら、クラス中が拍手しちゃって。

ばっかじゃない??!

勝手に付き出された私は何なのよ!

引くに引けなくなって、脇役ならって引き受けちゃったわけで。

「ちょい役だけどね。」

小さな声で吐き捨てるように言った。

「すごいじゃん!絶対見に行く!」

はぁ。

言わなきゃよかった。

これ、絶対ショウコから中学時代の友達全員に回っちゃうよ。

私みたいな人間がセリフしゃべって誰かを演じるなんて、前代未聞もいいところ。

「で、イケメン君は何するの?」

あ。

そういえば、ヒロは・・・。

皆にイケメンだからって主人公の相手役に選ばれてたっけ。

そう、この映画の脚本はあのにやけた担任が描いた学園恋愛ストーリーだった。

単に担任がやりたいだけじゃん?

「主人公の相手役。」

「うっそ。さすがイケメンね。」

さすがイケメンって、ショウコは一人で盛り上がっていた。



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