あの日みた月を君も
なんとなく部活はまだ決めきれないまま。

野球部やサッカー部の威勢のいいかけ声を聞きながら、グランドの横を通り過ぎた。

中学の時は、ショウコと示し合わせて、とりあえずバレー部に入った。

これまた結構ハードな部活で想像以上に大変だったけど、それなりに仲間ができて楽しい部活生活だった。

高校もねぇ。

入学前は入るつもりだったんだけどさ。

なんだか高校から入って、この疎外感たっぷりな雰囲気がどうもなじめる気がしない。

とりわけ、人見知りの激しい私は。

部活動の声が少しずつ遠ざかっていく。

こんな高校、三年間ももつんだろうか。

最近ため息ばっかだ。

しかも学園祭!

電車に揺られながら、自分が映画の画面に映る姿を想像して更にうんざりした。

「ただいまぁ。」

力なく玄関の扉を押した。

「おかえり!」

私の気分とは裏腹に元気な母親の声がリビングから響く。

母親は私がこの高校に入学が決まってからすこぶる機嫌がよかった。

だってね。

それなりの「偏差値」の高校だから。

それなりの「偏差値」の高校だったとしても、私が楽しいかどうかなんて気にもしてやしない。

母親のいるリビングに顔を出さないまま、2階の自分の部屋に上っていった。






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