あの日みた月を君も
後ろからカスミが身を乗り出して、

「本当に?」

って聞いてきた。

「んな訳ないでしょ。」

前を向いたまま冷たく返す。

更にヒロは言った。

「かもしれないってだけです。過去をさかのぼって前世までの記憶ははっきりしないですから。」

「前世かぁ。君は面白い切り返しをするね。なかなかの切れ者だ。」

先生は満足気に頷いた。

どこが切れ者なんだか。

ヒロは口元を少し緩めて笑っていた。

完全に先生のこと小馬鹿にしてるって感じで。

先生は感心してるけど、このヒロって奴は先生を馬鹿にしてるだけですよー。

心の中で言いながら、私もくすりと笑った。


それにしても、月を眺めるって全く同じ趣味があるなんて。


正直。


気持ち悪いんですけどー。


軽く身震いした。

私を見てきた月を、こいつも一緒に仰いでたことがあるってことだもんね。

そりゃ、誰かは同じ月を見てるだろうけど。

それが、初めて会った隣の席の子っていうことが判明するってのも不思議な気分なわけで。

もう一度ヒロの方をちらっと見た。

頬杖をついて、何かを考えてるような目をしていた。

変な奴。

カスミは私の肩をポンポンと叩いてきた。

そして小さな声で、

「大山くんって変わってるね。」

そして、

「でも、ちょっとかっこいいかも。」

って言った。

・・・。

かっこわるくはないけど、ね。

そうやって、高校生活第1日目の幕が開いた。



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