あの日みた月を君も
その日の夜、雲一つない夜空が広がっていた。

いつもベランダから眺める夜空は、下の方に街の夜景が見えた。

ふわっと明るい地上から視線を上げるとそこには月。

つるんと白く強く光る月だった。

きれい。

夜空に映える、とても美しい月だった。

ひょっとしたら、ヒロも見てるかもしれない。

って思ったら、少し落ち着かなかった。

今までは一人で見るから、集中して色んな空想しながら見れてたのに。

知ってる顔がちらつくっていうのはどうもいけない。

きっとヒロもそう思いながら月を眺めてるのかもしれない。

余計なこと言う女だなぁなんて思いながら。


それにしても前世なんて本当にあるのかしらね。

なんでも前世のせいにできたら、こんな楽なことはないわ。

でも、ちょっと使えそうね。

いつもより少し早めにベランダの窓を閉めた。

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