愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「これからもこの景色を思い出して。いつか、愛する人とまた見に来たらいい。そのときは歓迎するよ」

「そうね。頑張らなくちゃ。奏多さんのお陰で、せっかく海斗との関係をリセットできたんだもの。奏多さんよりも素敵な人と、必ず結婚するんだから」

俺と離れたあと、彼女は未来をしっかりと見据え、俺のいないこの景色を思い出す。
そのとき俺は、異国の地で君を恋しく思っているのだろうか。

「部屋に戻ろう。夜風で風邪をひく前に」

タキシードの上着を脱いで、彼女の細い肩に羽織らせる。

「ありがとう。暖かい……」

瑠衣は俺の上着に袖を通し、それを抱きしめるように身体を縮めた。

彼女の手をそっと繋ぐと、その手を引いて歩きだす。

溢れる想いを封じこめるよりも、君と会えなくなるほうがさらに辛いから。

伝えたりはしない。
『本当は君が好きだ』と。
君と過ごす僅かな時間を守るために。





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