愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
確かに彼女の言う通りだ。
去るならば今しかない。

バッグを受け取り、海斗の部屋番号が書かれたメモももらう。

「あなたの心中はお察しするわ。だけど月島ホールディングスの社員や事業、すべての責任を背負う奏多さんには、その立場があるの。どうか私を恨まないでね」

東堂さんに頷く。

「わかっています。あなたを恨むどころか、むしろ感謝しています。奏多さんが大変なことになる前に、それを教えてくれた。ありがとうございます」

「わかってくださって、本当によかったわ。こちらこそ、ありがとう。奏多さんが好きになった方があなたのような話のわかる方で、本当によかったわ」

私は彼女に頭を下げると、歩きだした。

とりあえずは、海斗と一緒に船を降りよう。
奏多さんとはもう、ふたりで会うことはない。

なにかを聞かれたら、海斗と結婚することにしたと言えばいい。
実際はないけれど。

その前に、海斗に奏多さんとの結婚がなくなったことを告げる必要がある。

いろいろなことを考えて気を紛らわせながら、私は足を早めた。




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