愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「へえ。臼井社長も、そんな冗談を言うんですね」


私がここにいることに躊躇う素振りも見せず、あからさまに奏多さんにアプローチする彼女を、私は信じられない気持ちで見た。
よほど自分に自信があるのだろうと思う。

そんな私に一瞬、睨むように目を向けた彼女だったが、またすぐに奏多さんに視線を戻す。

「父の話は冗談ではありませんわ。ですから父を安心させるつもりで、一度お食事に連れていってほしいんです。奏多さんがお忙しいのはわかってるんだけど、結婚に向けて今後の段取りなんかも話し合えたらいいかと思って」

私の目から見ても高いものだとわかる、光沢のあるグリーンのドレスを纏い、首からキラキラとした長いネックレスを下げている彼女は、奏多さんと同じ上流階級の女性だろう。

その顔にはかなり派手なパーティメイクを施しているが、化粧を落としても充分な美人だろうと思う。

そんな彼女に、奏多さんは私を腕に抱いたまま低い声で言った。

「……麗子さんは目がお悪いんですか?それとも、もうすでに酔っているとか。俺が抱いているこちらの女性が見えませんか」

急に自分の話が始まり、私は彼を見上げた。

「俺はあなたにプロポーズした覚えはないんですが。先ほどから、ずいぶんとおかしなことを言ってますね」

「え……?」

彼女のにこやかな笑顔が、急に真顔になる。

「そういう話ならば、もうあなたと話すことはありません。彼女があなたに嫉妬したら、俺は今夜、寝かせてはもらえなくなるんですが。こう見えて、彼女は激しくてね。まあ、俺としては、嬉しいからいいんですけど」

私と彼女は、驚いた顔で奏多さんを見る。
彼は私たちの反応を楽しむかのように、私と彼女を交互に見た。

「誤解を招くような発言は、控えていただきたい。今日は疲れているので、彼女の嫉妬に付き合う体力があるか、自信がありません」

なっ!なにを言ってるのよ!
目で彼に訴える。

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