福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「最近、仕事の調子はどう?」
珍しく彼の方が私を飲みに誘ったということは、仕事で何か行き詰まってるのかもしれない。そう思って問いかけてみるけれど、彼は意外にも笑顔で「やっと慣れてきて、すごく楽しいです」と答えた。
私の推測は見事に外れたけれど、つい数ヶ月前まで泣きそうな顔をしながら私に相談をしていたとは思えないような永田くんの返答に安心した私は、自然と口角を上げてビールをごくりと喉に流し込んだ。
「今日は、僕が相談に乗ってもらうために柏原さんを飲みに誘ったんじゃないですよ」
「え?」
「僕が、柏原さんの相談に乗ろうかなと思って誘ったんです」
彼の言葉に、私はただ首を傾げた。
「最近、柏原さんの溜息が増えたので何かあったのかなと思って。特に、今日の午後なんて五分に一回くらい溜息ついてましたよ」
「五分に一回って」
それは流石に嘘だろう、と思ったけれど、確かに、思い返してみれば午後4時頃に隣の席の上司から「柏原、溜息が多い」と一度だけ真顔で指摘された。
「何かあったなら、溜め込まないでください。柏原さん、人の事はよく見てていつも相談に乗ってくれますけど、自分の相談はなかなかしないですよね? 僕でよければ聞きますよ」