肖像画とノイズ(短編集)
地獄
【地獄】


 小野篁は夜ごと井戸を通って地獄へ下りていたという。でも私は合わせ鏡を使う。夜ごと鏡を合わせ、映った戸に潜り込む。

 顔馴染みの獄卒もだいぶ増えた。みんな気の良いやつらだ。
 彼らは親しみやすい笑みを浮かべ「ここに住めばいいのに」「ここに住んでくれたら楽しいのに」と口々に言い、私が通って来た合わせ鏡の戸を、金槌で粉々にした。




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