214草子
お人好しの同級生
【お人好しの同級生】


 人気者の彼は、今年もたくさんチョコを貰うだろう。
 去年はかばんをぱんぱんにして、普段ジャージを入れているバッグもぱんぱんにして、持ち切れないものは腕に抱えて、クラスメイトたちに「豊作だなぁ」と笑われながら帰って行ったっけ。

 だから今年は、手のひらサイズのチョコを、ちょっとした収納ケースくらいならすっぽり入るであろう大きな紙袋に入れて渡すことにした。

 それを見た友だちは「恋のライバルたちが渡したチョコのことまで考えるなんて、お人好しだねぇ」とけたけた笑ったけれど。

 人気者の彼が、親しくもなければ顔も人並みの、三百人近くいる同級生のひとりでしかないわたしを選んでくれる可能性なんて、限りなく低いから。それなら少しでも彼のために何かしたいなって思った。それだけだ。むしろメインはチョコではなく、この大きな紙袋かもしれない。

 どうか彼が楽に、大量のチョコを持って帰れますように。



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